倭族トラジャは研究者の思いが詰まった稀に見る良書でした。

インドネシアスラウェシ島、タナトラジャに住むトラジャ族に関する研究について記した「大修館書店 鳥越憲三郎・若林弘子著 倭族トラジャ」を読みました。

タナトラジャに残る、帆船の形をした住居「トンコナン」
nasigoreng.blog296

トラジャ族
インドネシアには数多くの民族が住んでおり、トラジャ族はその中でも特に独特な風習や文化を持っている事で知られています。
現地では生贄を伴う葬式の文化が今でも生活の中に根付いています。
トンコナンなどの住居形態はスマトラ島にも似た形態(ルマガダンなど)が見られますが、その関連性についても著書で述べられています。

「倭族トラジャ」私の感想
この本の内容は非常に詳細で多岐にわたるので簡単にはまとめられません。
この本で特に印象に残ったことをまとめると、
・トラジャには民族、文化の特殊性があるが、著者の提唱する「倭族」の概念を用いると日本との共通点が見えてくる。
・トラジャ族と一口に言っても、トラジャ族の中でも様々な「族」に分かれている。
・住居が「トンコナン」という名で知られているものの正式には異なり、正確には住居の呼称は「バヌア」。「トンコナン」は一族の血縁組織をの事を指す。
・トラジャ語も沢山載っている。(私がトラジャを訪れた時も現地ガイドはトラジャ語を沢山教えてくれました。しかし、私はトラジャ語は教えてもらったそばから忘れてしまいました。)
・住居や風習、文化のみならず、大工道具についても述べられている。500年前から続くとされるトラジャ族の文化、その中でも住居建築には7000年前からの技術が生かされているという説には非常に興味が持てた。

著者の研究者としての情熱
この本が出版されたのは1995年。
著書には20年前ですらタナトラジャは観光化が進んでいたと記されています。
しかし、観光ルート以外の非常にアクセスが困難な辺境の村にも訪れている著者の情熱には驚かされるばかりです。

側聞はしていたものの、初めてトラジャ族の高床式建物の前に立ったときの興奮は忘れられない。正直言ってドンソン文化を目の当たりにしたと感じたからである。それはさておき、その興奮が冷めやらぬうちに、前述のママサ・トラジャ族の高床式建物に接することになり、さらに驚いたのであった。
(P205より一部引用)

あとがきも興味深く、第二次世界大戦中にスラウェシ島調査に行くはずだったが中止になり、その後念願のトラジャの地に行く機会を持てた著者の思いが記されています。

実際にトラジャの雰囲気の独特さは忘れられません。
タナトラジャに興味のある方、訪れた事のある方には是非読んでいただきたいです。
この本の出版からは20年が経ってしまいました。
それでも、この本を片手に再びトラジャを訪れてみたいと思わせてくれる一冊です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

Time limit is exhausted. Please reload CAPTCHA.