表題の本、小川忠著、新潮選書「インドネシア・イスラーム大国の変貌~躍進がもたらす新たな危機~」を読みました。
(正確には以前に読んでいたのですが、今回記事にしています。)
最近のインドネシア事情について触れている本です。
インドネシアの寛容なイスラームが揺らいできている?
私の感想を述べていきます。
本書は2016年出版の本であり、ジャカルタやISなどについても触れており、最近のインドネシア事情について知ることができます。
特にインドネシアにおける「寛容なイスラム教」についての理解を深められます。
私自身、度々インドネシアを訪れています。
何度も訪れた事で「インドネシアらしさ」や「インドネシアにおけるイスラム教」などの雰囲気が何となく分かってきた気がします。
もちろん私が訪れた時に見ているインドネシアの風景はあくまで一場面に過ぎません。
それでも数を重ねる事で何となく見えてくるものがあります。(あくまで何となくです)
それが、本書で触れているインドネシアにあるいわば「寛容なイスラム教」なのでしょう。
しかし、最近では寛容さが揺らぎ始めています。
参考リンク「インドネシアにおける分断、インドネシアで他宗教への寛容さが揺らいでいる?」
他に、私が興味を持った点について述べていきます。
P188の「反日感情は何故消えたか」という章で、1997年の福田首相の演説いわゆる「福田ドクトリン」について触れています。
インドネシアは親日国というのは訪れて実感することですが、それを作った要素の一つに福田ドクトリンの影響もあるのでしょう。
詳しくは本書を参照してもらうとして、福田ドクトリンの意義を一部抜粋します。
福田ドクトリンの発表とその実行は東南アジアの対日イメージを如実に改善させた。「恐るべきサムライ国家」「強欲な町人国家」から「平和を育て、援助に取り組み、地域共同体形成に積極的な国家」へと
~中略~
もはや両者の間に戦争が勃発することを予感するものはどこにもない。
スマトラ島北部のアチェについても触れています。
アチェはスマトラ島沖地震の際に極めて大きい被害を受けた街です。
日本の東日本大震災の際にも、アチェからも援助活動が行われました。
今はアチェの高校生たちは希望に満ち溢れていると言います。
参考リンク「TSUNAMIをこえて スマトラ沖地震とアチェの人びと」感想」
本書のあとがきにもあったのですが、インドネシアではイスラム教の影響力が強いのは事実です。
日本では「イスラム教=危険」という考えを持つ人もいるのですが、実際は決してそういう訳ではありません。
インドネシアにおけるイスラム教の位置づけをより正確に理解するにあたり、本書は手助けになることでしょう。